第2話 ― 正論ほど、人を黙らせる ― cover art

第2話 ― 正論ほど、人を黙らせる ―

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第2話 ― 正論ほど、人を黙らせる ― おお、おまえさん。 今日も世の中、騒がしいことで。 あれが正しい、これが間違い。 声の大きい者ほど、胸を張る。 まあ、江戸の頃から、 この手の景色は、ちっとも変わりゃしません。 正しいことを言う。 筋を通す。 理屈で説明する。 一見、立派に聞こえますが、 どうも最近は、それで人が離れていく。 ――ところで。 江戸に、こんな小噺がございまして。 町内で評判の若い衆がいた。 頭も切れる、口も回る。 議論を始めりゃ、誰も敵わない。 ある日、その若い衆が、 長屋の縁側で、旦那に言った。 若い衆 「旦那、俺、間違ったこと言ってませんよね。 理屈も合ってるし、 数字も、筋も、全部そろってる。 なのに、皆、黙っちまうんです」 旦那、煙管を置いて、ひと言。 旦那 「そりゃあな…… 黙ったんじゃねえ。 黙らされたんだ」 若い衆 「黙らされた、ですか?」 旦那 「正論ってのはな、 人を納得させる前に、 逃げ道を塞ぐことがある」 人はな、 負けるのが嫌なんじゃない。 恥をかかされるのが、嫌なんだ。 理屈で追い詰められると、 口を閉ざす。 そして、静かに離れていく。 若い衆 「じゃあ、正しいことは 言わない方がいいんですか?」 旦那 「違ぇ。 勝とうとするな、って話だ」 江戸の大人は、 正論を言う前に、 必ず一拍、間を取った。 「俺の考えだがな」 「違ってたら、悪ぃがよ」 たったそれだけで、 正論は刃物じゃなくなる。 正しさより、 人が残る方を選ぶ。 それが、教養ってもんだ。 今の世の中、 正論ほど、人を黙らせる。 だからこそ、 言葉には、余白が要る。 今日はこれにて。 次回は、 「 黙って損する人、黙って得する人 」 そんな小噺を一席。 では、おあとがよろしいようで。 #AI#小噺#心理学
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